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夢 [町のノオト]




   夢

       (夢? 夢なんてあるもんか。とけてしまった冷蔵庫の中の
 
      氷。こぼしてしまった水。底の方に遠い距離がのぞいている

      がつかまえようとすれば冷たさが残るだけだ。)


夢はすずしい マイナスの世界だ

赤らんだ夢白い夢黄色い夢ずれた夢

音のしない火事のように近くの夢話し声のする遠い夢



どこまで行っても先へ先へ

きりのない路のように

どんなにむきになって走って行っても

ほっとして立ち止まる到着点のない

人生のように

夢は果てしないさわやかな距離だ



歩き疲れたひるまから夕暮の中へ

まぶたの向こうへ夜のはじまるほの明るい地平へ

人は白い路をたどって帰っていく

日なたから日かげの奥へひんやり入って行くように

(ひるまの景色をひやしているつぶらなまなこをひらいて)



 日かげの奥から日なたの景色をふり返ってみると美しい日

かげの奥には誰も歩いたことのない地図があるぼくらは裸足

で遠くとおく角笛の消えていった明るさの方へ歩きまわるた

だ帰らないために足跡をつけないで



けれども呼びもどされる 朝に

けれども夢の中へ出かけて行った者は

帰らない

ぼくら自身が眼をさまされたに過ぎない

ぼくらは夢の中へなど入っていったのではないことを

日かげと日なたのさかいめに

ぼんやり白く立っていたにすぎないことを



ふたたび食欲のように歩き出す振出し点に

まっさおな距離の前に

シャワーをあびた後のように

立っていることを

知る






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