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魂 [詩]




   魂


「生」の内部構造のいちばん下に

魂は冷えて沈んでいる。

情念や思念のおとす翳りをひたして。



冷えて沈んだまま 魂は

現像作用を繰り返している。

まばたきの合間に

眼が沈め 耳が濾した 映像や物音を

その深みでひっそりと晒しながら。



時に ぼくらの記憶は

魂の深みから映像を汲み上げる。

(かすかに響く 遠い水音……)

そしてそれを まぶたの裏の網膜にこぼす。



現像されながら まだ濡れている夕焼けの滲(にじ)み

溢れた海 夏のひろがり

甦(よみがえ)った人影。

風がそれらを 音もなく翻しながらかわかす。



かわくにつれて

いっそう鮮やかな姿になってゆく映像は

やがて畳まれて

情念や思念の奥にしまわれる。

わずかに 哀しみの陰影にふちどられて。



言葉のとどかぬ 「生」の内部構造の

いちばん下で

冷えて沈んだまま 魂は

ひそかな現像作用を繰り返しながら

すこしずつほぐれている。







      メモし忘れてしまってどの雑誌かわかりません。すみません。






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