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蟬 [詩]




   蟬


歌い疲れて 蟬は 地に墜ちる。

歌いつづけた歌が まだ

おまえの居たあたりの空に

おまえの形をして残っている。

うっすらと夕映えに彩られて。



何をそんなに

おまえは歌わなければならなかったのか。

おまえは根(こん)の限り汲み上げた。

おまえの存在の井戸に溢れ

「生」を浸した夏の命の湧き水を。


           ,,,
それで、おまえのつるべは切れてしまった。

急に訪れた沈黙の深みで

私は耳を澄ます。



すると 私の空耳(そらみみ)のはずれに

おまえの命の歌がよみがえり

いつしか おまえが汲んでこぼした湧き水が

私の内耳にしみとおってくる。

せつなさが さしこんでくるように。



やがて 澄んだ地下水となって それは

私の存在の井戸に湛(たた)えられ

私の「生」を濡らしてゆく。







   どの雑誌かメモし忘れています。すみません。






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