短歌は弱い心の棲家か (その7) [評論 等]
以上引用した二首の歌にうたわれているよ
うな人間感情を「感傷的なヒロイズム」「詠
嘆調に甘えて」いるものと言うとするならば
それは正しくない。これらの人間感情は、良
い意味で言うにしろ悪い意味で言うにしろ、
「短歌的」などという範疇や限定を越えて美し
い抒情という狭いワクをも越えている。
私はすぐれた短歌のもつこれらの人間感
情、「生活実感」「思想」「内容」を尊重し
ようと思う。そして、「その形式、三十一音
字音数律が生む一定のバイブレーション」
「このリズムにはまた一定の思想しか乗り得
ない。」「その音楽性とリズムの中に伏在する
一種の習慣的な秩序が短歌の内容そのものに
他ならない」などとは思わない私は、このよ
うなそそっかしい仕方で短歌を判断し、そこ
からして「短歌的抒情」を規定し、更にそれ
を尺度として無差別に短歌全般の否定を企て
ている者共から、これらのすぐれた短歌を擁
護しようと思う。
短歌研究 S35年5月号 より
2015-05-04 18:44
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