幾つかの詩 (その1) [評論 等]
幾つかの詩
感銘を受けた詩はおびただしい数にのぼる。それらの詩はい
ずれも沈黙の深さを持っていた。詩人の世界はそれぞれに個性
的であり、個々の詩が具有するものも実に多様であったけれど
も、沈黙という点に於ては一致していた。言葉は消し去られ、
それをうたった詩人自身も背後に姿を消して、ただ沈黙の深さ
だけがぽっかりと口をあけていた。個々の詩の主題が持つ具体
や限定を超えて、いっさいは沈黙の中に溶解し、作品は無名に
なって自律している。それらの詩から受ける私達の感銘は、い
わばおのれ自身の沈黙をもってする一つの選択であり、そし
て、心に深く残る詩というものは、私達の選択を無限に許し、
また可能にする性質を持っている。
以下、その2へ続きます。
「詩学」S42年 5月号
2015-06-17 21:15
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