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『黄金文明』『大阪文学学校詩集』  (その1) [評論 等]





   『黄金文明』『大阪文学学校詩集』



 長島三芳詩集『黄金文明』(黄土社刊)

 著者の第五詩集であり三十篇の作品が収め

られている。巻末の記録によると第四詩集

『終末期』の刊行は一九五四年であり、した

がってこの第五詩集刊行までに約十四年の歳

月が費されたことになる。詩三十篇の制作の

為に十四年の歳月を要したということは、こ

の詩人の詩に対するストイックな態度と覚悟

を語っているように思われる。三十篇の詩を

読んでみるならば、それらの歳月が一篇々々

の作品に磨きをかけ、ポエジイを深化させて

いることに気づくだろう。このような長島氏

の態度は、詩集が即成の形で安易に発行され

ている一部の風潮に対する無言の批判になっ

ているように思われる。

 私が今迄に読み得た長島氏の作品は「弾丸(たま)」

その他わずかばかりのものであった。しかし

「弾丸」を読んだ時の感動は今も私の心に余

韻を残している。戦争のもたらす悲惨と荒廃

と傷心が肉体の痛みに於て捉えられていた。

作品からほとばしり出る訴えかけは、われわ

れ読者の理性にだけ働きかけるといった性質

のものではなかった。感情にも肉体にも、つ

まりわれわれの全存在に強く働きかけてくる

ものだった。そしてそのことによってわれわ

れの理性に働きかける力も一層強く鋭いもの

になっていた。「弾丸」がわれわれに提示し

た批評精神の鋭利さと強靭さ、詩精神の底深

さは、詩集『黄金文明』にも一貫している。










以下、その2へ続きます。

 「詩学」 1968(S43)年 12月号
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