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三冊の詩集   (その7) [評論 等]





   もんしろちょう



少年の頬で

夕焼けになる もんしろちょう



もの言わない

少年の残酷な仕草で

おのれの薄幸と

おのれの美しさに耐えきれぬ

最後の羽ばたきが

明日になれば忘れてしまう 少年

思い出のなかに 落ちる



 この詩人の感受性の鋭さと豊かさ、そして

感受したものを表現する力量の確かさが、こ

の作品からうかがわれる。とりわけ「少年の

頬で/夕焼けになる もんしろちょう」とい

う詩句及び「最後の羽ばたきが……少年の思

い出のなかに 落ちる」という詩句は比類な

く美しい。優れているのはこの作品ばかりで

はない。ほとんどすべての作品がそうであ

る。私はこの詩人について多くのことを書き

たい気持ちを持っている。しかし今は紙幅にも

限りがあり、ここはその場でもない。くだく

だしい私の解説を記すよりも、作品を少しで

も多く紹介しておこうと思う。



   学芸会



森で溺れた人のことは

だれも語らない

終日 動物たちは眼を凝らしていた

それが森を なお暗くしていた

私は森の精にひざまずいて

私にあたえられた二行の台詞(せりふ)を

兎の耳をつけながら

幾度も繰りかえした



   かまきり



夏と薄い鎌だけが

ぼくに与えられた全部のものならば

ぼくはあまりにも虚勢を張りすぎる

夢が追いかける

それもぼくには美しすぎて似合わない

それにしても 人や空や神たちは

なんとぼくによそよそしいことか

夏と背なか合わせに

あまりに急ぐので

ぼくの気管には いつも

だれかの血が滲んでいる

        (部分)











以下、その8に続きます。



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