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あたたかさ・純粋さ   (その3) [評論 等]





    ある日



 片町線の放出(はなでん)駅で 白い杖をついた小学四、五

年生位の子供が電車に乗ろうとしている 妹ら

しい子が目の見えない兄の手を引いて何やらこ

まごまと注意している この兄は この世に生

れてきて やさしい母の顔も たくましい父の

姿も 愛らしい妹の目も 明るい風景も なに

ひとつ見ることが出来ない やがて電車が発車

しようとしている この子の電車は きれいな

きれいな花をつんでいる。ぼくはこの電車をみ

たとき ぼくの体から げじげじが落ていった





 土屋氏の眼は対象にむかうと同時により深

く自分自身にむかう。土屋氏は、すべてのも

のを自己にかかわらせ、自分の魂を傷つける

ことなしには見ることも言うこともできな

い。土屋氏の作品が持つ特有の羞恥や人間的

あたたかさは、そこから生れてくるのであろ

うし、人間に関する素朴ではあるがゆるぎの

ない批評性もまた、これらの上に築かれたも

のだ。最後にもう一篇、土屋氏の作品を紹介

しておこう。





    ハト



 びっこの

 ハトがいる

 このハトをみて笑わぬ人は

 一人もありません 

 ハトは

 かなしい目で

 びっこの姿を 

 みつめている











 以下、その4へ続きます。



タグ:ハト ある日
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