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短歌は弱い心の棲家か   (その1) [評論 等]





   短歌は弱い心の棲家か


 「短歌的抒情」ということが、このような

特定の名を附されて日本文学、特に詩歌部門

の問題としてとり上げられた。詩の方で言え

ば小野十三郎あたりが早く『試論』の中でと

り上げて論じ、その後この問題は仲々にはっ

きりされずに詩人の間でも尾を曳いて論じら

れ続けている。私が思うに特にこのような称

呼をもって他の抒情一般と区別してとり上げ

かたについては、とり上げた者がまず「短歌的

抒情」以外の抒情一般とこれとの区別、彼ら

の言う「短歌的抒情」の明確な規定、特質に

ついての充分の説明、説得を、それを否定す

るしない以前の根源的な問題としてする必要

があったろうと思う。このことが例えば小野

の場合にも不十分であり不用意であったよう

に私は思う。そこからして論議の割に実体が

明らかにされず問題が前に進まないという事

態が起り、しかもあいまいなままにいわば「短

歌的抒情を概念的に想定し把握したままで、

短歌全般を処理しようとしたことが、無用の

錯綜混乱を生じさせたのではないだろうか。

正直に言って私には「短歌的抒情の否定」論

者のいう「短歌的抒情」の実体がよくわから

ないのである。そこで私はそのことをはっき

りと説明してくれるようにという主旨の一、

ニの雑文を今迄に書いた。それをはっきりさ

せることは「短歌的抒情」問題を論ずる前提

問題であると思ったからである。したがって

それからの雑文においては、私は短歌の問題

についての私自身の考えというものを充分に

出すにはいたらなかった。しかし消極的に彼

らの説明を待ってばかりいては問題はいっこ

うに前進しない。そこでここでは素人として

の私が考えている短歌についての意見を出し

て多くの人達、特に短歌を専門にしている人

達の仮借なき批判を待ちたいと思う。














以下、その2に続きます。

   短歌研究  より
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