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三つの詩集  (その6) [評論 等]





 「そうやって、かって美はあったので/そ

れはすでに美ではなかった」という詩句も、

私にはよく理解できない。おそらく作者の意

中には、こう表現させるレアリテが実在し、

イメージは鮮明な姿で見えているのにちがい

ない。しかし「かって美はあったので」とい

う場合、具体的にそれがどういう「美」であ

るのか、そしてなぜ「それはすでに美ではな

かった」ということになるのか、その消息が

読者には充分に理解されないのである。「樹

はオルガンのシンメトリにまたがり」という

表現も、具象性に欠けているのではないだろ

うか。こういう結果が生じたのは、おそら

く、自分の感動内容の咀嚼に充分の時間をか

けず、表現に際して、辛抱強くあることを怠

ったためではないかと思われる。私はこの詩

人の真摯な態度を評価する故に、本来豊饒な

ものとなるべきであった詩が、やせたものに

なったことを惜しむのである。集中私が佳い

と思った作品の一つに「水中の庭」がある。



 魚はわたしのように論理的に酔うことはし

  ないから

 わたしは 魚が

 ガラス鉢の中で雨になるのをみる

 スモモの花弁のように降下していくのをみ

  る

   (略)

 最初に稲妻

 つぎに雨を降らす雲

 死ぬまでのみじかい時間を

 魚たちは

 水中で雨になって ねじれる











以下、その7になります。



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