三つの詩集 (その7) [評論 等]
松尾繁晴『愛について』(初音書房)
著者の第二詩集であるが、ここに収録され
ている作品はどれもこれも端正でみずみずし
い。柔軟でやさしい作者の感受性が感じら
れ、しかし一方、表現は極めて理知的であり
作者の美意識によって充分の彫琢が施されて
いる。作者は自分の息づかいに即して無理を
せずにうたっている。一読してリルケ的世界
ないしは立原道造風な世界を感じさせるが、
ここにうたわれている世界はあくまでも松尾
氏自身のものであり、氏自身の肉声がやさし
い響きをもって読む者の胸に伝わってくる。
一見作者の感受性に即してよどみなくうたっ
ている(「うたう」という言い方が、この詩
人の作品には最も似つかわしい。)ように見
えるが、こういう表現を得るまでには、一篇
一篇の作品制作にあたって想像以上の時間が
費されたにちがいない。「この詩集を手にす
る者はここに、深く愛し、誠実に生きる日々
に、悩み、祈り、そして歓んだ、君のひたむ
きな魂が見つづける、さまざまの愛のすがた
を見出すでしょう」と、広畑譲氏が跋文に書
いているが、私も広畑氏の考えに同感であ
る。「この詩集を読みながら感銘深く思う作
品の一つ一つに紙片をはさんでいったが、紙
片は読み進むにしたがってふえていくばかり
であった。
以下、その8に続きます。
2015-07-18 10:37
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