黒人霊歌 [町のノオト]
黒人霊歌
はるかな
いちめんの雨のように
黒人霊歌はうたわれているだろう
ぼくらの知らないとおい国で
ぼくらの住んでいるぼくらの国で
そしてぼくらの心のはてしない曠野で
みえないくさりに手をしばられ足をしばられ
不毛の曠野をもくもくとあるきながら
雨のようになげきながら
雨のようにのろいながら
雨のように死につきながら……
かれらの唇(くち)からにじみでる黒人霊歌
それは
雨のように地球をつつみながら
雨のようにしめりながら
雨のようにふるえながら
ぼくらの心にしみとおってくる
死んでいった黒人たち
生きている黒人たち
これから生れてくる黒人たち
きえていった黒人霊歌
ひっそりとうたわれている黒人霊歌
これからもうたわれるであろう黒人霊歌
かれらのくるしみ
かれらのなげき
かれらのかなしみ
かれらのせいいっぱいののろい
地球に重い雨はふりしきり
ぼくらの知らないとおい国を
ぼくらの住んでいるぼくらの国を
そしてぼくらの心のはてしない曠野を
暗い黒人の列は過ぎていく
とおい地平をみつめながら
しめった大地をうつむきながら
はるかな
いちめんの雨のように
今も
黒人霊歌はうたわれている
2015-02-19 22:00
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