こいうた [詩集 井戸]
こいうた
干し物は 人が脱ぎ捨てた形のままで
じっと待っている
空の青さの中で
歎きの娘のように
ーーしずくのかわく時を
まぶたの内にひろがっている
海のかわく時を
そよ風は
すべてのしめりけを
すべての「思い出」を
空の青さの遠い奥に
かえす
よごれも しみもゆすがれた
けれども
心までしみ透(とお)して濡らした病気は
かわかない
干しざおの下に 消えない夏の蔭をひんやりおとし
いつまで待っても 帰ってこない着ていた者を
待っている「記憶」のように
とりこまれ たたまれて
箪笥の奥にしまわれても
かわかない
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2015-03-07 10:40
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