石原吉郎書附け 三 「うた」の復権 (その1) [評論 等]
三 「うた」の復権
もう一つ石原詩にとって大切な問題がある。それは
「うた」の復権の問題である。石原氏は『石原吉郎詩集』
あとがきに、こう書いている。
第1部には『サンチョ・パンサの帰郷』の全部を、
第2部にはその後の作品と、第1部に洩れたものの
ほぼ全部を収録した。これらの作品を通じて私の意
識に常にあったものは、詩における『うた』の復権
ということであった。(以下略)
「あとがき」から判断すれば、石原氏は詩的出発の当
初から、この「あとがき」の書かれた一九六六年九月二
十八日に至る間に創られた詩作品のすべてにわたって、
常に「うた」の復権を「意識」していたことになる。
一九六六年から六七年の二年間、私はある仕事の関係
で月に一度は石原氏と話し合う機会を持ったが、ある時
私は、「詩作にあたって何に最も心をくだくか」という
意味の質問を石原氏にしたことがあった。石原氏は即座
に「リズムである」と答えた。この答えは私にとって予
想外のことであった。「うた」の復権といい「リズム」
といい、これらの言葉が意味する具体的内容を私は理解
することができなかった。しかしやがて石原氏の全作品
を読むにつれて、私にも石原氏の言おうとする意味がわ
かるように思われてきた。
以下、三のその2へ続きます。
2015-07-04 09:45
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