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子供たち   コメント [詩]





 僕に二才の甥がいる。僕の家の庭続きに住

んでいるので、ほとんど一日中僕の処へ遊び

に来ている。僕と甥とは互いに良い遊び相手

だ。時々甥は蝉になる。そういう時僕は木に

ならなければならない。甥は僕の木にとまっ

て涼しい声で鳴き始める。するといつか僕は

甥のために青空に枝をはった高い高い木に変

身している。

 甥は電線にとまっている燕と話をしてきて

その様子を僕にきかせてくれる。僕の家の近

くに排水所があるが、そこの排水口にむかっ

て甥は話しかける。しゃがみこんで動こうと

もせずいつまでもいつまでも話している。排

水口の奥から甥がかえってくる。甥にとって

は、そこに不思議な人が住んでいるのだ。

 甥が何時までも僕と仲良しでいてくれるよ

うにと思ってこれを書いた。











 「現代詩手帖」 1961(S36) 4月号



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