子供たち コメント [詩]
僕に二才の甥がいる。僕の家の庭続きに住
んでいるので、ほとんど一日中僕の処へ遊び
に来ている。僕と甥とは互いに良い遊び相手
だ。時々甥は蝉になる。そういう時僕は木に
ならなければならない。甥は僕の木にとまっ
て涼しい声で鳴き始める。するといつか僕は
甥のために青空に枝をはった高い高い木に変
身している。
甥は電線にとまっている燕と話をしてきて
その様子を僕にきかせてくれる。僕の家の近
くに排水所があるが、そこの排水口にむかっ
て甥は話しかける。しゃがみこんで動こうと
もせずいつまでもいつまでも話している。排
水口の奥から甥がかえってくる。甥にとって
は、そこに不思議な人が住んでいるのだ。
甥が何時までも僕と仲良しでいてくれるよ
うにと思ってこれを書いた。
「現代詩手帖」 1961(S36) 4月号
2015-07-06 20:54
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