三冊の詩集 (その6) [評論 等]
鷲谷峰雄『忘れるだけの海』(北書房刊)
収録された二十六篇の詩には、若々しく、
清新な詩情が流れている。「私はいまでも
詩の本質は抒情だと思っている。現代詩の領
域の広汎さにと思って、自己をみつけられた
かった日々がとても苦かった。」と「あと
がき」に書かれているが、この詩集を一貫する
抒情は上質のものである。初夏のさわやかな
日ざしと、日ざしの中にふときざす不安な死
の翳りを、私はこの詩集から感じとる。「現
代詩の領域の広汎さにと惑って」と言ってい
るが、この詩集に於て鷲谷氏は、自分の詩の
「領域」をさぐり当てているし、自分の素手
でしっかりと「自己をみつけ」出していると
言うことができる。自己の領域と自分の資質
を見失なわずに育てていくならば(私はそれ
を期待する)、鷲谷氏は独自の優れた詩世界
を築き上げていくのではないかと思われる。
以下、その7へ続きます。
2015-08-15 09:17
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