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詩集『幻影哀歌』など   (その1) [評論 等]





   詩集『幻影哀歌』など



 詩集『幻影哀歌』(歴程社刊)は岡田刀水

士氏の何冊目の詩集であろうか。私は正確に

は知らないが、前詩集とこの詩集との間には

永い歳月が介在しているはずである。それは

数年というようなものではなく、十数年こと

によったら二十数年といったような歳月であ

るはずである。しかし、そういう永い歳月の

間に書きためた作品を全体にわたって見渡し

た上で、取捨選択し収録するという方法をこ

の詩集はとっていない。散文詩形式で書かれ

た作品だけ、しかも一貫したテーマのものだ

けが選ばれている。

 岡田氏から手紙をもらい、私が岡田氏を高

崎にたずねたのはもう十何年も前のことにな

ってしまった。その折、岡田氏は若輩の私に

実に細かな字で書きこんだ詩稿を見せて、卒

直な意見を聞かせてほしいと言った。私の意

見によって自分の詩を省みようという態度が

見え、ことによると私の評言をもとに自分の

詩の全面的な書き直しをさえしようとする程

の熱心さが感じられた。私は何度も作品を読

み、私なりの感想を持ったが、岡田氏の真摯

な態度と、私を一人前扱いした対応の仕方に

感銘した私は、何ごとかを言おうと思って考

えれば考える程、自分として言うべきことは

何もないように思われてきた。その時見せら

れた作品もこの詩集には収められていない。

考えてみれば、何ごとかを言おうと考えれば

考えるだけ、何も言うことがなくなってしま

った私のていたらくは、今も変りがないよう

に思われる。岡田氏の作品に限らず総ての詩

集に対する場合にそうである。私には人の作

品を評する資格のないことがいよいよはっき

りしてきている。











以下、その2へ続きます。

   「詩学」 1969(S44)年 5月号



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