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米田和夫詩集 緒方利雄詩集   (その2) [評論 等]





 米田和夫詩集『流れる時のなかで』

 この詩集を私はもっと早くに論評すべきで

あった。実はその用意もしたのであったが、

前から予定していた詩書に紙幅を費して果せ

ずにいた。私は気がかりであった。



   ポプラ



ポプラは、いつも 天空を突き刺している

冷たく鋭い針としてではなく

ひとり抜け出る ためらい と

優しく柔軟なバネを秘めながら……

予言者の思慮深さで 遠い地平を みはるかし

パラボナアンテナのように うつりゆくものを すべて感受する

ポプラは また 悔いのない垂線を 地表に おろす

奥深い球心のありかを すなおに暗示しながら……

根は ひろびろと 大地を這い

天下る垂線を がっちりと受けとめる

いつの頃からか ポプラたちは この構えを このポーズを

崩そうとしない 天と地の あわいに立ち

これが唯一の生き方である……と確信しているかのように





 これが唯一の生き方である、と確信して、

天と地のあわいに立っているポプラの在り方

は、この詩人自身の世界に対する対し方を明

らかにしているように思われる。米田氏は一

種広大な宇宙感覚と鋭敏な感受性を持ち合わ

せている一方、われわれがよって立っている

ところの「地表」にむけて「垂絶」をおろ

し、「奥深い球心のありか(・・・)」をさぐろうとす

る現実感をも備えている。「天」に眼をむけ

ることによって「地」をおろそかにし、「地」

を凝視することによって「天」をふりかえら

ない、ということがない。つづめて言えば、

豊潤なポエジイと潤沢なイメージを駆使しつ

つ、広大な宇宙をうたい、時の流れとその中

で生成し消滅する人間の愛や実存をうたい、

更には、現実上或いは社会上の諸々の事柄に

対する批判を展開し、われわれ人間同士の連

帯を呼びかけている点に、この詩集の大きな

特徴があると言える。これらの特徴を最もよ

く具現化した作品が、冒頭の「ヴオストーク

Kより リーザへ」と題する長詩である。お

そらくこの作品は、宇宙船から地球を俯瞰

し、地球を一個の惑星として眺めることの出

来る地点から、地球上に存在する様々の国や

そこに住む人間について考える、といった発

想にもとづいて書かれたものにちがいない。

こういう発想それ自体がすでにユニークなの

だが、次のような詩句があって、彼のユニー

クさをうかがい知る具体的な手だてとなる。











以下、その3へ続きます。



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