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鳥見迅彦詩集『なだれみち』など  (その2) [評論 等]





 大雑把にみて『なだれみち』の諸作品は、

内容の上からほぼ三つに区分することができ

るようだ。その第一は、「うしろむきの磔」

「登攀者」等の総題のもとにまとめられた作

品群、著者「あとがき」中の言葉を借りれば

「その運命的・悲劇的な意味」をより濃く湛

えたものであり、もっとも直截に『けものみち』

の世界を引き継いでいる作品群である。第二

は、「空には鷹」「クララ」の総題のもとに

集められた諸作で、愛とエロチシズムにかか

わりを持つ傾向のものである。第三は、「ハ

イマツのハンモック」の総題のもとに集めら

れた作品群で、これらは登攀を直接の主題と

している点に於て第一の作品群と変りがない

が、前者とはやや趣きを異にして一種の明る

さと人間に対するおおらかな見方が底流とな

っている。総じて詩集の前半は悲劇的な色あ

いとそれに伴う苦渋の翳が色濃く、後半に進

むにつれて明るく軽快な様相を呈する。

 しかしこれらの区分けは便宜的なものに過

ぎないのであって、『なだれみち』の底流を

なしているものは、『けものみち』の詩世界

にも通ずる「その運命的・悲劇的な」性格で

ある。つまり私の言う自虐性を媒介項として

なされる倫理性への志向である。私はこの詩

集繰りながら、用紙の底に何本かの縦線が

透し模様となって施されていることに気づい

たが、丁度その透し模様のように、「運命的

・悲劇的な」性格はこの詩集を貫流してい

る。











以下、その3へ続きます。



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